不動産の売買契約を締結する際、多くの場合、
売主は買主から「手付金」を受け取ります。
「売買代金の一部を先払い」した
お金のように考えている方もいらっしゃいますが、
厳密に言えば違います。
民法には手付に関する特有の規定が定められています。
以下の3種類があり、それぞれ違った目的や
機能を持っていることを覚えておきましょう。
(1)証約手付
契約成立の証拠として授受される手付。
(2)違約手付
売主・買主のどちらかに債務不履行があった場合、
相手方が被った損害に充てる手付。
(3)解約手付
売買契約を解除することになったときに充てる手付。
買主が解除する場合は手付を放棄し(手付流し)、
売主が解除する場合は受け取った
手付金の倍額を返却(手付倍返し)する。
手付金は代金とは異なるもので、
担保のような機能も持っていることがわかりますね。
本来ならば、買主から売買代金が全額支払われたとき、
売主は手付金を返却しなくてはなりません。
しかし、わざわざ手付金を返却して、
別に売買代金を支払うのは手間がかかりますので、
「手付金を売買代金の一部として充当する」
といった文言を売買契約書に盛り込み、
手付金を差し引いた残金を支払う形が一般的です。
手付金を代金の一部としてただ受け取るのではなく、
どんな目的をもって交付されるお金なのかを知っておくことが大事です。
◆手付金の相場はいくら?
手付金は、法令で支払うことが
義務付けられているわけではありません。
ただ、高額な資産取引である不動産売買では、
契約履行前に予期せぬ出来事が起きたときのための
保障の意味もかねて、手付金を交付するのが慣例です。
では、手付金はいくらなのでしょうか。
不動産会社が売主の場合は、
手付金は20%以内と法律で定められています。
個人が売主の場合、
法律で定められているわけではありませんが、
手付金は売買代金の10%前後が相場になっています。
不動産の売買契約を締結したあとも、
他に良い物件との出会いがあれば、
買主は解約に心が傾くものです。
しかし、せっかく決まった契約を反故にすることになれば、
売主としては痛手。手付金が少なすぎると
気軽に解約されてしまう可能性がありますし、
多すぎると売主都合で解約したい時に
金銭的な損害が大きくなってしまいます。
売主として考えられるさまざまな状況を想定して、
10%前後の間で妥当な手付金を設定することが肝心です。